食虫植物と栽培要素(栽培スタイル編)

 

 久々の栽培要素ページの更新です、今回は直接栽培に役立つ内容ではありませんが、表題通り筆者の栽培スタイルについて紹介してみます。これをヒントに食虫植物と長く付き合えるかもしれません。

 筆者はただ今(2009年現在)、普通に会社員をしております。サラリーマンともいいますね。すると日常時間がある程度拘束されてしまいますので、一日中植物に構っていられるというわけにもいきません(まあ一日中構っていたら飽きてしまうかも)。月〜金曜日は概ね朝6時半〜夜8時までは家を空けています。土日は幸い休みが取れますし、祝日・お盆、年末年始もほぼカレンダー通り、もしくはそれ以上に休みをいただける事もあります。この辺まで振返ってみても時間的に恵まれている方だと思います。が、平日仕事疲れもあって、そんなに植物の世話に時間を取られたくないというのも本音であります。学生時代までは、ある意味自分で時間を管理出来ましたが、社会人となるとそういうわけも行かず、栽培時間をどう確保するかが問題となってきます。
 一方、食虫植物を本格的にはじめたのが2000年だったので、もう9年も経つのですね(( ̄▽ ̄;)遠い目)。脱線しますが、初めて植物栽培に触れたのが観葉植物でして、こちらを含めると13年となります(最初に買ったテーブル観葉植物だったユッカ・エレファンティペスは最古参です、というかもうテーブル観葉植物ではなく、普通の鉢植えにまで成長してます)。食虫植物の話に戻しますが、この面白い植物の世界に入ってきて、1,2年ですぐ飽きてしまう人、そのまま長く続く人、一旦中断してまた復帰する人に分かれると思います。私の場合、幸い自宅通学・通勤という生活なので、中断する事も無く続けられています。今回、長く続けてみたい人向けに書いてみました。
 以下の点が食虫植物をはじめとした、趣味としての園芸を長続きさせるポイントとなる事でしょう。

@植物の管理する数に問題ないか?

A日常管理の時間・手間が取れるのか?

B維持費は?

おおまかにこの3点が問題となってくると思います。では、順に見ていきます。

@植物の管理する数に問題ないか?

これはおそらく初心者の方が陥りやすい問題としても挙げられると思います。というのも、初心者の方はやたらめったら数を集めたくなります。私も最初は数を集めたくてしょうがなく、初めて通信販売を利用した京都の春草園(今は閉店)で定期カタログに載っていた食虫植物を全て注文するなどしていました(春草園は定価が高めに設定されていた事でも有名で、全部注文した時2万円を超えた事もありました、これが高いか安いかは人それぞれだと思うが、今にしてみると買いすぎたなあと思っています)。他にもJCPSや他の山野草業者も注文していた時期もあり、あっというまに栽培品種も増えていきました。まあこれでまず満足していきますが、さらに欲が出てしまうのも人情と言いますか、購入数は増えていきました。で、管理数が自分の管理できる能力を超えてしまうと当然管理が行き届かなくなり、また目新しさが無くなったり、飽きてしまったりすると管理意欲が落ちてしまい、枯死する株も出てきました。自然淘汰という言葉が当てはまると思いませんが、自分の管理出来る種類が残っていきます。ここで、長く続ける一つの考え方として、枯死した株がなぜ枯れたかを考えてみて、明らかに自分の栽培技量や設備等が足りなかった事が原因であれば、しばらくその品種は購入するのをやめます。絶対買わない、というわけではないですが、またすぐ買っても枯れてしまうのは見えています。栽培経験を積み、設備等をそろえた時、もう一度挑戦するのが良いでしょう。

私の場合、初心者時代にウトリキュラリア.フンボルティーやアルピナなど購入していました。今考えると、かなり無謀ですね。他にも種類を集めたく、アフリカ産のモウセンゴケを導入しましたが、一部を除いて我が家では絶えてしまいました。
管理数についても、今はほとんど鉢数を増やすことはありません。大まかに書くと、数は全品種合わせて150鉢も無いと思います。これを見て、私の栽培数は結構少ないと思われた方もいるのではないですか?でもこれが私の生活での適正管理数なのです。


 


Roridula.gorgoniasの苗床。
珍品扱いされていても、意外と自分と栽培の相性があうものもある。


A日常管理の時間・手間が取れるのか?

食虫植物は放っておいて栽培できるものと、手間をかけてやらないと枯死するものもあると思います。特に難物といわれる品種については、この傾向が強いようです。しかし仕事で疲れて帰ってきて、食虫植物の念入りな手入れを毎日しなければならないと思ったとき、必ず苦痛になってくる事があると思います。特に自動管理設備など恵まれた環境であれば申し分ないですが、水やりだけでもかなり時間が取られるかもしれません。微妙な水やり加減を求められる品種だとかなり手間がかかるでしょう。また栽培場は十分に余裕を取れるようにします。日常生活に必要なスペースに栽培場を持ってくると家族から文句が出たりしますので、場所の確保も注意が必要です。特に大きな温室を建てる場合もよーく家族と話し合うのが重要だと思います。

私の場合、一日一時間程度植物の世話に時間が取れます。しかし毎日一時間世話しているかといえば、そんな事は無く、世話する日もあればない日もあると言う感じです。でもそうできるのも、手間がかかる種類が無いからと言ってもいいでしょう。今一番手間がかかるものと言えば、播種後の苗床や挿し木の苗床ぐらいじゃないでしょうか(ドロセラ.ヒラリスも実際は放置しています)。サラセニア、ハエトリソウは栽培設備はゼロで栽培でき(腰水出来るぐらいのツールはあったほうがよいが)、低地性ネペンテスも暖房器具があれば、管理は楽です。サラセニア、ハエトリソウ等は少々水やりをサボっても腰水なら水切れまで2,3日は猶予がありますし(夏は腰水が浅いと危険ですが)、ネペンテスも表土が乾くまで2,3日あるので管理は楽だと思います。

B維持費は?

食虫植物もお金がかかります(人にもよりますが)。コレクションしたい種類があっても珍品は高価!お小遣いも限りがあります、さらに手持ちの株の維持費はゼロではないので、なお苦労は絶えないと思います。といっても私も安月給なので給料のうち園芸費に当てているのはぶっちゃけますと、月平均で1,000〜2,000円程度です(安すぎかしら?全く出費しない月もあります)。一番かかるのは用土で、主に水ごけ費用がかさみます。特に家の周辺のホームセンターでは品質悪な水ごけが多く、蘭専門店の品質良の水ごけを求めています。1kgで約3000円ぐらいが相場です。他、赤玉土、鹿沼土を良く使いますので15gで300〜500円程します。あまり安いのを買うと粒が潰れたりしているものも多いので注意しています。他、温室の保温用ビニール費や、ヒーターの暖房費(月どれだけか正確には把握していませんが、温室のヒーターが計800ワットほどあります)などもあり、鉢代、水代、薬品代などいろいろ出費があります。これらはあまり生活に影響しない範囲でやりくりするのがミソだと思います。高山性ネペンなど購入し、冷房温室を作った時、クーラーなど本格的な設備を導入した場合、購入費だけでなく、ランニングコストもかかるでしょう。あまりお金がかからない方法を考えるのも楽しいと思います(お金をかけるところはしっかりかけた方がいいのも事実です、予算に合わせて!)。普通の温室も坪数が大きくなると、暖房代が馬鹿になりません(特に昨年の燃料高の時は大変だったと思います)。

私の場合、ネペンテスの暖房代とヒラリスの冷房代がまず電気代としてかかっています。しかし温室自体が軒下用の温室なので知れていますが。冷房代も小さな冷蔵庫栽培なのでそれほど高くないと思います。他、植え込み材料として水ごけを冬のサラセニア植替え時期に3kg程は購入しなければなりません。砂利植えが一番コスト安かもしれませんが、私の栽培場では水ごけが一番良く育つので水ごけで栽培しています。他、水やりの水もかかりますし、ビニール温室等は一年に一回は張り替えないと劣化しますので、そのお金もかかります。最近はあまり出費がありませんが、新たな植物の購入費もかかるので、定職についてしっかり稼ぐのがまず基本でしょうか。
(^^;

番外編(マンネリ感の打破)

まあここまで書いた点以外にも長続きする秘訣はあると思います。これまで生き残った品種=ありきたりの品種(と言う事が多い)だけ栽培するのもつまらないと思います。私も実際にそう思います。そこで自分の栽培技量から大きく逸脱しない範囲で少し変わった品種を育てていくのも面白いと思います。私の場合ですと、サラセニア、ネペンテス、ドロセラなどは管理は楽なものばかりですが、逆に言えばありきたりの品種ばかりで、品種だけで言えば、おそらくマニアの方が見られても何も面白いものはないと思います。これらばっかり栽培していても自分もマンネリ感が出てくるので、自分の栽培技量向上のため、なにか難物に挑戦するのも一つの手ではないかと思います。

私の場合、最近ですとロリデュラとドロセラ.ヒラリスに挑戦しました。ロリデュラはドロソフィルム栽培経験を活かし、ヒラリスは会誌などをヒントに環境の実現がそれほど困難ではないと判断し挑戦しました。両者とも良い結果が出たので、、これだけでも周りに自慢の一品と言えるものですが、最近はさらに別の品種にも挑戦したいと思っています。まだここでは書きませんが、別品種に挑戦しようと企んでいます。一つずつ難物に挑むのもいいと思います。ただし前にも書きましたが、難物だけが全て、といった栽培スタイルはおススメしませんし、長続きしませんのでそれだけはご注意下さい。また成功のアテの無い品種に手を出すのも止めた方が良いでしょう。

以上、私の長続きしてきた栽培スタイルのポイントを紹介してみました。成功を焦らず、気長に栽培してみませんか?次回、覚えていたら薬剤編について書いてみようと思います。

 

 

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