食虫植物と栽培要素(用土編)
食虫植物は他の一般園芸植物と違って特殊な環境を再現しないと上手く育たないことが多いと思います。食虫植物に限らず自生地の環境を考慮することは栽培をする上で非常に重要な事です。そこで今回は栽培していく中でも特に重要な用土について記述してみました。園芸売り場に行くと「洋ラン用の土」や、「観葉植物用の土」、「山野草用の土」など、メジャーな植物の用土は専用に売っていますが「食虫植物用の土」というのは見た事がありません。まあ、それだけ食虫植物はマイナーな植物であろうと思われるのだが(^^;、そうなると自分で用土を作っていかなきゃいけません。そこでまず、今回は食虫植物を植えつける用土についてまとめてみました。以下に示す表1の用土は実際私が今まで使用してきたものです。また、食虫植物の多くが酸性用土を好みます(種類によっては石灰分を好むものもありますが)。ピートモスは特に酸度調整しているのかどうかを袋の表示で確かめ、分かりにくい場合は店員に聞くなどしてみて下さい(たまに店員も分かってない場合もありますが(^^;)。
表1.私が使用している(していた)用土とその効果(一般論)
用土 | 効果 | pH | 通気性 | 水持ち |
赤玉土 | 関東ロームの下層土。水はけ、通気性が良く一般植物の植付けにも適している。 | 6.0〜6.5 | ○ | ○ |
荒木田土 | 主に田んぼや河川に堆積した土。粘土質で水持ちは良いが、通気性が劣る。 | 6.0〜6.5 | × | ○ |
鹿沼土 | 栃木県鹿沼地方の下層土。サツキ用土やさし芽用土に用いられる。軽い。酸性用土。 | 5.0〜6.0 | ○ | ○ |
軽石 | 鉢底に敷いて水はけを図るのに用いられる。腰水栽培する時、使用すると効果大。 | 6.0〜7.0 | ○ | × |
桐生砂 | 赤褐色の下層火山砂礫。通気性、保水性に優れます。山野草栽培にも使用される。 | 6.0〜6.5 | ○ | ○ |
ゼオライト(珪酸白土) | 多孔質の石で珪酸塩を主成分とする。酸度調整、根腐れ防止に効果がある。 | 7.0 | △ | △ |
バーミキュライト | ひる石を焼成した人工の土。無菌であり、主に種まき用土や挿し木用土に適する。 | 7.0 | △ | ○ |
パーライト | 真珠岩を焼成した人工の土。無菌であり、かなり軽量。通気性が大変良い。 | 7.0 | ○ | × |
ピートモス(短繊維) | 水ゴケ等が腐植化した土でほぼ無菌。酸度無調整のものは、強酸度。最初は水を含みにくい。 | 3.5〜4.5 | △ | ○ |
ピートモス(長繊維) | 荒く繊維が残っている。通気性は短繊維より良い。軽量で強酸度。入手困難。 | 3.5〜4.5 | ○ | ○ |
日向土 | 宮崎産の軽石を焼成した土。無菌であり、水はけが大変良い。サボテン用土にも可。 | 6.0〜6.5 | ○ | △ |
ベラボン | やしの実チップ。水を含むと膨らむ性質があり鉢の水はけが良くなる。 | 6.0〜6.5 | ○ | ○ |
水ゴケ | 生きた水ゴケを乾燥させたもので、長い繊維の水ゴケを選ぶのがポイント。外国産が多い。 | 5.5〜6.5 | △〜○ | ○ |
生水ゴケ | 生きたままの水ゴケ。栽培中、株元に水ゴケが茂り過ぎないようにカットする。入手困難。 | 5.5〜6.5 | △〜○ | ○ |
表1に示した用土の通気性、水持ちを考慮すると単用での使用が難しい用土もあり、その場合は複数の用土をブレンドしてそれぞれの長所を組み合わせていく必要があります。以下に示す、表2は実際私が植物に使用している(していた)用土との組み合わせを示しました。
表.2植物と用土の関係(我が家の場合) 黄色字は現在使用している用土です。
植物のグループ | 用土(括弧の数字は用土全体を合計10とした時の割合) | 育ち具合は? |
Byblis liniflora filifolia 同上 |
桐生砂(8)+粉末ピートモス(2) 桐生砂(8)+粉末ピートモス(2) 水ゴケ(10) |
○ ○ ○ |
Cephalotus | 水ゴケは株周りで、他は鹿沼土+バーミキュライト+パーライト 水ゴケ(10) |
○ ×(枯死) |
Dionaea | 水ゴケ(10) 生水ゴケ(10) 鹿沼土(7)+粉末ピートモス(3) |
○ ○ ○ |
Drosera(亜属・セクション) Ergaleium(球根ドロセラ)
Bryastrum(ピグミー)
Regia(レギア) 同上 Thelocalyx(ブルマニー) 同上 同上 Drosera (その他)
|
鹿沼土(4)+赤玉土(4)+ピートモス(2) 鹿沼土(8)+パーライト(1) +ピートモス(1) 水ゴケ(10) 鹿沼土微粒(8)+パーライト(1)+ピートモス(1) 鹿沼土(7)+ピートモス(3) 水ゴケ(10) 水ゴケ(10) 赤玉土(10) 水ゴケ(7)+生水ゴケ(3) 水ゴケ(7)+生水ゴケ(3) 水ゴケ(10) |
○ 開始 ○ ○ ○ ×(枯死) ○ ○ ○ ○ ○ |
Drosophyllum | 鹿沼土(8)+粉末ピートモス(2) 鹿沼土(8)+長繊維ピートモス(2) ※いずれも鉢底に軽石を敷いた 桐生砂(8)+粉末ピートモス(2) |
○ ○ ○ |
Nepenthes | 水ゴケ(10) 鹿沼土(10) |
○ ○ |
Pinguicula コンドイ その他(メキシカン系) |
日向土(10) 水ゴケ(10) |
○ ○〜△ |
Sarracenia | 水ゴケ(10) 鹿沼土(9)+ピートモス(1) 桐生砂(8)+ベラボン(2) ベラボン(7)+パーライト(2)+ゼオライト(1) |
○ ○ ○ 開始 |
Utricularia 着生種 地生種 |
水ゴケ(2)+生水ゴケ(8) 水ゴケ(10) |
○ ○ |
表2の用土の組み合わせは絶対的ではありませんが、特に黄色字の組み合わせは一定程度栽培の出来の実績があり、現在採用しています。また、上記の植物で現在栽培していない品種もあるので、そちらはいずれまた入手して試してみたいですね。
食虫植物の栽培は各種の自生地の環境を調べて、栽培環境、自身の手間のかけ具合などをみて用土を考えていかなければならないと思います。これは食虫植物だけに限った事じゃないですが。自生地環境を参考にしたうえで栽培環境に合う用土を選ぶのが重要だと思います。上の表はあくまでも私の配分方法です。
2017.1.16 改訂