メキシコ皆既日食(2024.4.8)


皆既日食を見たい

前回、皆既日食を見たのが2017年のアメリカ皆既日食でした。久しぶりに皆既日食を見たいなぁっと思ったのがコロナ禍から解放されつつあった2023年。本当なら日食として超レアな2023年4月の豪州金環皆既日食が候補となりましたが、まだ新型コロナが5類に移行しておらず、ツアー会社も少なかったため、断念しました。2023年5月に新型コロナが5類に移行し、水際対策が完全に(?)撤廃されて海外との行き来が普通になって来た頃、次の皆既日食はどこが候補になるか?と考えると晴天率、アクセスのしやすさを考えると2024年のメキシコ皆既日食が候補となりました。しかしツアーの詳細が発表されるところは秋ぐらいまでほとんど無く、事前の大まかな発表情報から私の中では近畿日本ツーリストのメキシコ・トレオン皆既日食ツアーが第1候補に浮上しました。理由は最短2泊5日の弾丸日程が魅力的だったからです。しかしネックなのが、ツアーへの申し込みが早いモノ順ではなく、抽選だった事です。11月30日締め切り12月上旬当落発表だったため、皆既日食の半年前になっても遠征決行が出来ないモヤモヤ感があったのは残念なところですね。遠征が決定出来ない焦り?みたいなものがあったので、他社ツアーにもいくつか申し込みました。
幸い私の第1希望だったコースの抽選に当たり、成田発着2泊5日の弾丸コースに決定。その時点で他社ツアーはキャンセルしました。遠征が決定したのが12月上旬で、申込書を1月末までに返送しないといけなったので、切れていたパスポートを取得しました。


左が新しいパスポート、右側が旧パスポート


ツアー抽選に当たり、案内が届いたのが12月下旬。


メキシコ皆既日食の注意点


東京都内で皆既日食ツアーの説明会が開催される連絡を近畿日本ツーリストからいただきましたが、平日夜、地方在住の会社員は参加出来ません。後日、動画が届く案内がありましたが、届いたのはツアー参加者限定のYouTubeのURLでした。動画内ではツアー参加の注意点として、メキシコは入国時にカメラ2台までしか非課税で入国出来ないという説明がありました。小型機を含めるとカメラ3〜4台は持ち込もうと思っていたので、何ともガッカリな情報です。ですが、下にも書いた通り、リハーサル撮影が出来なかったので逆に良かったのかも知れません。気になるメキシコでの通関ですが、到着後、もう一度荷物チェックがあり、その時に「カメラはカバンから全て出しなさい」と言われました。預け荷物の方は入国時はノーチェックだったので、こちらの方にカメラを入れておけば、結果的には3〜4台は持ち込めたと思います。そうは言っても無申告だと没収されたり、高額課税されるリスクはあるので、止めた方が良いと思います!

(1)観測計画を立てる

静止画と動画で撮影する計画にしました。しかしカメラは2台までしか持ち込めないため、スマホも重要な撮影ツールとなりました。静止画、動画の振り分けは以下の通り。正直、スマホ撮影はぶっつけ本番だったので、ほぼすべての設定をオートにして撮影しました。

@静止画(カメラ):望遠コロナ写真、広角風景写真

A動画(スマホ):広角動画

 

(2)機材を選定する

おおまかに撮影計画が決まれば、次は機材の選定です。

表記:カメラ, レンズ, 三脚(Bのみスマホ, レンズ, 外部マイク, 三脚)

@望遠コロナ写真
Nikon D850, BORG89ED, ビクセンGP2ガイドパック

A広角風景写真
EOS R6, RF14-35mm F4L IS USM, ,Gitzo GT2542

B広角動画
スマホ(SO−41A), KRP-04sw, MKE 200, Ulanzi MT-21

特に今回は皆既中の高度が70度と非常に高かったので、普通にスマホで撮ると地上風景が入りません。ワイドコンバージョンレンズを付けました。クリップ式でスマホに取り付けられますが、スマホカバーは外す必要があります。また、最大限動画の質を高めるため、音声マイクを外付けしました。定評のあるゼンハイザー社をチョイス。


KRP-04sw

MKE 200

C気温測定、ピンホール

前回のアメリカ皆既日食でも気温変化を測定しましたが、温度計に太陽光が直射する状態で測定していたため、気温測定の実態に合っていませんでした。今回は温度計に太陽光が直接当たらないよう、段ボールで囲い、反射用に白い厚紙を貼りつけました。なお、温度計は皆既日食当日は三脚ではなく、観測会場で引っ掛けられる場所があったので、そちらにぶら下げました。1分間隔で気温を測定記録する温度計ロガーを使用しました(温度計:RC-5、アメリカ皆既日食でも使用)。
ピンホール作成も毎度おなじみで、現地名と皆既日食当日の日付を入れました。


(3)リハーサルなし

今回はリハーサルらしい事はほとんど出来ませんでした。というのも2月までは食虫植物の植え替えで忙しく、とても皆既日食撮影の練習に取り掛かる余裕がありませんでした。とは言え、撮影計画だけは立てました。リハーサル撮影せずに皆既日食遠征に臨むのは無謀と思えましたが、これまで2回(悪天候も含めると3回)、皆既日食遠征の経験があったので、皆既日食の独特な緊張感は心得ていたので、その経験が活きたという感じです。それでもベテランから見たら無謀だったかも知れません。不安を抱えながらツアー当日を迎えるのでした。




※余談

皆既日食ツアーに出発する1か月前ぐらいから、国内で麻疹流行の兆しのニュースが飛び交いました。海外から麻疹ウイルスが流入するのが原因で、関西でも数名発生し、滋賀県でも罹患者が出ました。まだ罹患者数こそ少ないですが、抗体が無いとほぼ100%感染し、重症化すると肺炎を発症するとの事で、昨年新型コロナに罹って肺炎で長期間苦しんだ人間としては無視出来ません。麻疹抗体検査をすると、予防出来る抗体価が無いことが分かりました(子供の頃に1回接種したのみの世代のため)。抗体検査をした病院で麻疹ワクチンを打ちたいと先生に言ったら「前日でワクチンが切れてしまった。ワクチンが次いつ入るのか分かりません。ワクチンが品薄です」と言われました。メキシコは麻疹流行地域ではありませんが、成田空港に行かないといけないので、アジアやアフリカから来る人達も多いはず。抗体価が無いまま、成田空港に出向くのはイヤだったので、急いで市内の病院に電話を掛けまくったら、とあるクリニックで風疹との混合ワクチン(MRワクチン)ならあるとの事で、予防接種をしました。こちらもギリギリだったようで、良かった〜。ただ出国10日前の接種になったので、副反応が心配でしたが、結局、副反応は出ませんでした。

 

(4)皆既日食ツアー(出発〜観光編)

4月6日(土)
朝6時半、成田空港のチェックインカウンター近くに集合だったため、前泊しました。ツアー参加者は料金が高額だったためか平均年齢が高め。参加したコースでは私が一番若かったかも?
成田→メキシコシティへはアエロメヒコの直行便を利用しました。約12時間のフライトで疲れました。時差は15時間。日本の朝に出発したのに12時間かけてメキシコシティに到着したら、また早朝です。メキシコシティから観測地のトレオンまでの乗り継ぎ時間が10時間以上あるので、メキシコシティ市内を観光しました。観光やランチが終わり、空港に戻ります。夕方、メキシコシティ空港から観測地のトレオン空港に向けて飛び立ち、約1時間半のフライトでトレオン空港に到着しました。ホテルはイビスホテルで、空港からバスで約10分ほど。相部屋の人に挨拶をして遅めのボックス夕食を摂って、すぐに寝ました。相部屋の人はプロの天文研究者の方で、京都大学岡山天文台の人でした。今回はプライベートで来ているそうです。


成田空港のチェックインカウンター(第1ターミナル)。
預け荷物は25キロまでOKでした。


メキシコシティへ到着。市内にある独立記念塔。PLフィルターを
付けていないのに空が青いです。おそらくメキシコシティの標高が
高いからでしょう(約2,240m)。

 


ソカロ広場にあるメトロポリタン大聖堂。
中にも入りましたが、帽子は外さないといけません。

 


ベジャス・アルテス宮殿近くのイダルゴ通り。薄紫色の花が
たくさん咲いていて、花の名前は「ジャカランダ」。

 


ランチです。美味しいのですが時差ボケで眠くて、たまりません。


メキシコシティからトレオンに到着。
皆既日食ムードを感じました。

4月7日(日)
メキシコに到着して2日目は、観測地の下見とトレオン市内観光です。まず朝食後、10時〜13時まで観測場所の下見時間です。観測場所はホテルの立体駐車場3階になります。エレベータで撮影機材を楽に持ち込めるという触れ込みでしたがエレベータは故障中。何とか明日の観測日当日までに修理するとの事でした。熱心な参加者は機材を出して撮影練習していましたが、曇天優勢で私は場所取りだけしました。参加者数に対して思ったより広いので、場所の心配はありませんでした。広角風景写真を撮りたかったので、持ち込んだ三脚のうち1本を壁際にセットするつもりで場所取り。赤道儀などメイン観測は下の上段右写真の中央部付近に陣取りしました。
観測地の下見を終えたら、トレオン市内のローカルレストランでランチです。その後、巨大キリスト像の観光と、地元のスーパーでお土産を買いました。ホテルに到着後、行きたい人はシャトルバスで市内のショッピングモールで夕食を食べる事が出来ましたが、私は疲れが残っていたので、ホテル1階のレストランで相部屋の人と夕食を食べました。夕食後、シャワーを浴びて寝ようとしましたが、寝られませんでした。疲れているのに寝られないのは、皆既日食当日の天気が心配だからです。明け方2時間ほどしか寝られなかったです。前日になっても観測日当日はMost Cloudy(曇天)予報で、絶望的でした。


宿泊したイビスホテル。



観測地は立体駐車場の屋上。ツアーで貸し切りでした。



観測地は広く、場所取りでトラブルは
ありませんでした。しかし天気が・・・。



シーザーサラダです。メキシコ発祥の料理と
いう事を初めて知りました。基本的にドレッ
シング無しで、お好みでピり辛のソースを
掛けて食べます。


CRISTO DE LAS NOAS
トレオンを見下ろす丘に巨大なキリスト像が
立っていました。ケーブルカーが混んでいた
ので当初近くで見られない予定でしたが
現地係員との交渉で、バスでの登頂が特別に許され
ました。(違うコースの人は近くで見られなかった
らしいので、本当にラッキー)


本場のタコスは絶対食べたかったので
迷わず夕食はタコスをチョイス。ローカル
フードを食べるのは旅行の楽しみですよね。

 

(5)皆既日食ツアー(観測編)

4月8日(月)
天気予報通り、皆既日食当日は雲が多かったです。完全に太陽が隠れる時もあれば、薄日が射す時もありましたが、快晴下での観測はまず無理だという事を理解しました。曇り予報で皆既日食が見られたらラッキーという、諦めモードで臨む事にしました。しかし、相部屋の人はこれまで10回以上、皆既日食遠征をされてきて、「(皆既状態が)何も見られないという事は無かった」という心強いコメントがあったので、諦めモードの中でも少し期待を持って臨みました。


ホテル近くの歩道橋から撮影。皆既日食
当日というのに、この雲の多さに胸騒ぎ
が・・・。

ホテルに泊まっていた外国人たち。こちらも日食観測
で来ていたようで、皆既日食のTシャツを着た熱心な
日食ファンが多かったです。バスに乗ってどこかに
行きました。

第1接触が11時だったので、9時半頃に観測地に入り、セットしました。前日壊れていた立体駐車場のエレベータは直っていました。1時間ほどで2台のカメラと1台のスマホのセッティングが完了しました。天気は太陽の場所が分かるぐらいの薄曇りの時と、厚い雲に遮られる時と両方で露出が難しかったです。しかし奇跡的に食が進むにつれて、薄雲エリアが西側から広がってきました。


部分日食が進む。

 


部分日食が進み、ピンホールで楽しむ。日食が進むに
つれて、徐々に雲が薄くなり、陽射しが強くなってきました。

 


皆既2分前。糸のように細くなった太陽。星ナビのスタッフは、
フィルターを外しても良いとの事でしたが、私は計画通り
皆既1分前で外しました。このぐらいの時間帯から
早くも近くの建屋から悲鳴のような歓声が聞こえました。



第2接触のダイヤモンドリング。この時、電子シャッター撮影を
止めてしまい、メカシャッター(ミラーアップ)撮影になり
当初計画の高速連写が出来ませんでした。

 


雲のせいで、やや眠たい皆既に日食写真になりました。

 


プロミネンスがとても綺麗でした。双眼鏡を新調した
甲斐がありました。

 


第3接触のダイヤモンドリング。4分あまりの天体ショーは
曇天予報を考慮すると、上出来だったと思います。



皆既日食が終わり、ホッとしたのも束の間、三日月の
木漏れ日を撮影したかったので、立体駐車場から
下りてホテルの植え込みを探しました。短い枝葉の木や
サボテンが多かったので、探すのに難儀しました。

 


ISO200、SS 1/2000秒〜1/2秒の11枚の画像をステライメージ8
で加重平均でスタック処理後、回転アンシャープマスク、マルチ
バンドシャープ、トーンカーブ調整済。月の部分のみ1/500秒で
撮影した画像を合成。
撮影機材:D850, BORG89ED

 


第2接触

食の最大


第3接触


月の影の移動がよく分かります(写真の右側から左側へ移動)。
撮影機材:EOS R6, RF14-35mm F4L IS USM
ISO100, F8, SS1秒

 



撮影機材:SO-41A, KRP-04sw, MKE 200




日食時の温度変化グラフ(1分間隔でロガー)。最大4℃ほど温度低下が見られました。
青線が第1接触と第4接触。
測定機材:RC-5


上の観測結果は、リハーサル無しを考えると上出来と言えるでしょう。しかしリハーサル無しがゆえの失敗をしています。ここでは備忘録として記録します。

@背面液晶が使えなかった
皆既日食の高度が70度と空高いため、チルトの背面液晶を使用する計画でした。部分日食撮影は電子シャッターでインターバル撮影しながら1分間ずつ撮影しようと思っていたのですが、この場合背面液晶が使えませんでした。インターバル中は背面液晶が使えず、ファインダーも真っ暗!これでは太陽が構図出来ません。めちゃくちゃ焦りました。これに気付いたのが部分日食直前。リハーサル撮影をしなかったツケが出た感じです。やむを得ず、インターバル撮影を続けましたが、時々インターバル撮影を止めて構図チェックという撮影になりましたので、部分日食は一定間隔で撮影出来ませんでした。もっとも、厚い雲に太陽が遮られた事も多かったので、結果的に一定間隔で部分日食を撮影出来なかったのはあまり大きな影響はありませんでしたが、リハーサル撮影の重要性を痛感した次第です。

A電子シャッターを使わず撮影した
当初の計画では、電子シャッターを使用して高速連写でダイヤモンドリング撮影をする予定でした。しかし、上の背面液晶が使えないのは電子シャッター撮影によるものだと思い込んでしまい(実際はインターバル撮影にすると背面液晶が使えない)、メカシャッターでミラーアップ(露出ディレーモード)撮影でダイヤモンドリング撮影をしてしまいました。結局この撮影方法はアメリカ皆既日食の時と同じで、ダイヤモンドリングの写真があまり撮れず、選別できる素材が少なくなってしまいました。わざわざCF EXpressカードを事前に買った意味が無くなりました。トホホ。

Bスマホ動画はピンぼけ、露出オーバー
ピンぼけしないようフォーカスをマニュアルにしようとすると、スマホ固定機材がちょうどスマホの液晶操作部分と被る事が判明。これではピント調整が出来ません。なので、ピントが外れる覚悟でオートフォーカスのまま撮影しました。結果、皆既中は暗いのでピンボケしてしまいました。また露出もオートにしていたので、皆既中は露出オーバーになり、明る過ぎるぐらいの動画になってしまいました。この失敗も事前にリハーサル撮影しなかった事が原因ですね。

上記の失敗はあったものの、皆既日食は待ってくれません。「出来る事は頑張ろう」がモットーなので、自分の持てる能力の範囲で撮影を進めて、何とかメキシコまで遠征した甲斐のある釣果となりました。


(6)皆既日食ツアー(帰途編)

4月8日(月)〜10日(水)
第4接触間で日食観測を終えた後、急いで片付けます。周りでは皆既日食が終わったら片付ける人が多いです。日食観測後、2時間ほどホテルでゆっくりする時間があり、その後帰国の途につきます。本当ならシャワーを浴びたかったのですが(外気温は30度!)、着替えを多めに持って来ていなかったのでGATSBYで全身ふきふき。あとは前夜ほぼ寝られなかったので、ウトウトしていました。あっという間にホテル出発時間となりました。トレオン空港にはホテルから10分ほどで着きました。トレオン空港からメキシコシティ空港までのフライトはそんなに長くないですが、フライト中は結構機内が揺れて、あまり寝られず。メキシコシティ空港に到着後、各自遅めの夕食を摂りました。新聞の夕刊があれば今日の皆既日食の記事があるかな?と思って空港の店舗で新聞売り場を探しましたが、見つからず。自分用のお土産買って、深夜1時に成田に向けて出発しました。帰りの飛行時間は逆風になるので約15時間。さすがに腰が痛くなって寝られませんでした。
成田空港に到着後、皆既日食ツアーは解散となり、次回もよろしくお願いします、との添乗員さんからコメントがあってお別れしました。何だかんだで、メキシコ皆既日食は満足度が高かったです。少しですけど観光が出来たし、皆既日食も薄雲越しながら第2〜3接触の皆既状態を全て見られたので良かったです。

次の皆既日食は2026年スペイン皆既日食か、2028年豪州皆既日食が現実的です。金銭的な面から2年後は厳しいので、2028年豪州皆既日食が本命になりそうです。


観測体制。風景写真の機材と温度計ロガーは
別場所にあります。


トレオンを出発。


トルタとインディオビールでメキシコ最後の食事を摂ります。


メキシコシティから13,000km以上のフライトを経て、
成田空港に到着。疲れた〜。



 

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