東京八丈島・一正園訪問記2013

 

訪問日;2013年7月14日

(注;このページの画像の無断使用はご遠慮下さい) 

 ちょうど2013年の春から仕事の転勤があって、東京勤務となり、ここに居られる間に行く事が出来る食虫植物に関係する場所(自生地含む)といえば、真っ先に思い浮かんだのが一正園でした。一正園があるのは東京都・八丈島。さすがに都内だからと言って思いつきで行ける場所ではありませんが、羽田から飛行機で40〜50分程度。おまけに現在住んでいるのが羽田空港から割と近いところなので、普通の週末にでも行く事が可能となりました。1泊2日あれば八丈島はぐるりと一周出来る広さでちょうど観光も出来ますので、転勤生活1年目の夏に、早速八丈島を訪れる事を決心しました。決心したのが5月ごろでした。

 一正園を訪れたのは八丈島滞在2日目の朝でした。到着する2〜3分前に「今から行きます」という電話を入れて(もちろん、もっと前から訪問のアポはとっています)、5年ぶり2度目の一正園の訪問となりました。





 一正園の入り口には画像のように『一正園』の看板がありますが、入り口から入ると一正園の女将さんが居られました。早速挨拶しましたが、私が5年前に訪問した事はさすがに覚えておられなかったようでした。知らない男と2〜3時間お話して5年も経っていればしょうがないか。挨拶もそこそこにして、早速女将さんがネペンテス温室を案内して下さいました。ネペンテス温室は左側の温室で右手は果樹が中心となります。




温室はかなり古いが、現役。



温室内は白っぽい屋根に覆われているので、強烈な日差しが差し込むことはない

 さすがにこの時期は温室の窓を開けておられます。ただ温室が古いためなのか、横の窓は小さくかなり熱気が溜まっています。温室内は33℃ぐらいありました。湿度がものすごく高く汗がすぐに噴出してきました。額の汗が眼鏡に落ちることもあり、カメラを手に持っていると結構大変でした。しかし温室の外を出ると、外の乾いた風が肌に気持ち良く、ネペンテス栽培には窓を小さめにとって中の湿度を確保されているのだと思いました。
 女将さんがネペンテスの品種について、丁寧に由来から説明してくださりました。今でも数は少なかったですが園のオリジナル交配は続けておられるとのことで、実生株の鉢が並べられているスペースがありました。上の温室内は主にラフレシアーナやトランカータ、クリペアタ、メリリアーナ、交配種系が置かれています。前回訪問時大きな袋を付けていたメリリアーナは調子を崩して今袋は付けていないとの事。葉を見ると大きく長いのを付けていたので、直に大きな袋を見られるのは間違いないでしょう。
 ただ、この広大な温室の冬場の管理温度を聞いて、愕然としました。最低気温は7〜8℃で管理しているとの事。理由はやはり燃料費圧迫によるからだとか。ほとんど八丈島の冬の戸外の温度と変わらないのではないでしょうか。女将さん曰く、トランカータやベントリコーサ等、寒さに強い品種に移行していきたいとの事でした。2〜3月ごろは温室に来ても袋はほとんどついていない状態だそうです。

上に書いたようにメインのネペンテス温室は低温で冬越しをされていますが、別棟の温室の果樹温室の一つでは区画をビニールで仕切って電熱線で加温しているスペースがあります。そちらではアンプラリア、ノーしアナ等の高温品種が置いてありますが、それほど温度は保っていないとおっしゃっていました。越冬可否ギリギリのラインでの冬越しとなっている状況が少し心配であります。




冬場、高温に保つともっと大きな袋を付けそうなラフレシアーナ。









クリペアタ。八丈島の溶岩に植えられています。



 溶岩植えは水ごけで根回りのみ包み、あとは溶岩で植え込むといった感じだそうです。出荷品は溶岩を使わなくて、一正園でずっと管理する株だけ溶岩植えにされています。島内の業者さんから軽トラック1台分の用土を買って使っているそうです。多孔なので通気は良いはず。




画像からも石の表面に小さな孔があいているのが分かる。




ボッシアーナ


次に、サラセニアプールに案内されます。こちらも交配種が多いですが、最近はイッセイが一株のみになってしまったとの事。中々株分けで増やしやすい品種ではないので、絶やさないよう気を付けておられました。他は、品種札を見ていないのですが、艶姿、コーティー八丈、などオリジナル品種が並んでいます。他、オオバナイトタヌキモ、ムラサキミミカキグサがありました。




サラセニア栽培プール。足元は割れた素焼き鉢のかけらで敷き詰められている。











オオバナイトタヌキモの開花



 写真は撮っていませんが、軒先でN.ボングソや、セファロタス、ムシトリスミレ類の栽培をされていました。高山性のN.ラヤが前回の訪問時では健在でしたが、その後枯死してしまったとの事。八丈島の夏は日中は猛暑にこそなりませんが、夜間は熱帯夜になる事もあるので、高山性ネペンテスの夏越しは難しかったのかもしれません。
 真夏の栽培場を見学していると、さすがに暑く、喉が渇いたので持参してきたペットボトルの飲み物を飲もうとしたら無くなっていたの気づき、女将さんは奥から冷蔵庫で冷えたパパイヤを持って来て下さりました。ペロリといただきました。冷たい麦茶もいただき、感謝でいっぱいです。

 お昼ご飯の時間が近づき、あまり長くいても失礼に当たると思い、最後に一正園の園報をいただいてお別れしました。これまで夏の一正園しか見ていないので、ぜひ他の季節も見学させて下さいと申し上げ、了解して下さりました。低温でネペンテスを冬越しさせているのを聞くと、ネペンテスが調子を取り戻してくるちょうど今の真夏の時期が一番観覧には良いのかも知れません。
 個人的に感じたのは、今の女将さんが元気なうちは一正園の食虫植物を今までと変わらず維持・管理されていかれると思いますが、いずれ世代交代された時にこのまま食虫植物が今の規模で維持・管理されるのか心配な面も感じました。部外者の私がそんな事感じても大きなお世話だと思われると思いますが、これからも一正園が末永く食虫植物の聖地であり続ける事を祈っています。



 

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