注意)この文はJCPS発行の食虫植物情報誌平成17年10月号に掲載された筆者投稿の記事より公開。

兵庫県立フラワーセンター紀行

 

兵庫県立フラワーセンター訪問記

 

 

7月28日 天候;晴れ

 私はこれまで兵庫県立フラワーセンター(以下フラワーセンター)を2回訪れています。そして今年で3年ぶり3回目の訪問となります。フラワーセンターの食虫植物の栽培レベルは日本有数といわれています。前回まではフラワーセンターの夏の食虫植物展を観覧するために訪れていたのですが、今回は事前に育成温室内も見学させていただける運びとなりました。もちろん案内役は食虫植物の栽培技師のDさんです。

 当日、私は昼12時ごろにフラワーセンターを訪問するという約束でしたので、余裕を見て滋賀の自宅を朝7時に出発しました。フラワーセンターまでは電車等を使いました。滋賀から兵庫県加西市にあるフラワーセンターまでは、私の場合JR琵琶湖線、JR加古川線、そして北条鉄道を乗り継ぎます。北条鉄道の終点である北条町駅に到着した後、さらにフラワーセンターまでの距離が約3,4kmはあります。歩いて行けない距離でもないのですが、当日はカンカン照りの猛暑でしたのでやむなくタクシーを利用しました。

 タクシーに乗車し、ほどなくしてフラワーセンターに到着です。さすがに平日でしたので園内を散策する人達はまばらです。時計を見ると時間は12時前。余裕を見て家を出発したのですが、途中乗り継ぎに時間がかかったこともあり(JR加古川線はローカル線なのでダイヤが1時間に1本)結構ギリギリです。まだ少し約束の時間まであったので、開催中であった夏の食虫植物展を見学していました。

 食虫植物展の開催場所は観覧温室内であり、フラワーセンターの南入口から入場するとすぐに大きな観覧温室が見えてきます。早速温室内に入ってみると、ネペンテスを中心とした立派な大株、ヘリアンフォラの花後の大株、ドロセラ類、ピングィキュラ類、ディオネア、イビセラなどが展示されています。観覧温室の横ではサラセニアの戸外展示もされています。展示品の中で私の一番のお気に入りは、フラワーセンターの名物(?)ネ.クリペアタです。株の直径が70〜80cmはあり、大きな捕虫袋を幾つも着けています。また大型種ネ.メリリアーナが立派な袋を着け、ネ.ペルビレイが元気良く生育しております。おそらく展示室はネペンテス大好き人間にはたまらない空間でしょう。しばらく展示品の観察、写真撮影をしているとお会いする約束の時間となり、いよいよDさん登場です。

 お会いした時間が昼の12時を過ぎており、私とDさんは昼食をまだ摂っていなかったので、まずは温室横にある小さな食堂で昼食をいただく事になりました。私とDさんは初めてお会いするのですが、私はDさんをテレビや、新聞、またJCPS田辺さんのサイトでDさんが登場するページを見ていた事もあって、あまり初めてお会いするという感覚ではありませんでした。初めてお会いしたDさんの第一印象は「元気なオッチャン」です。

 食堂は食虫植物展示会場とガラス一枚隔てた所にあり、ネペンテスを見ながら食虫植物談義に花を咲かせて昼食をいただきました。お話では、Dさんは昨年まで4年間ほど食虫植物の栽培技師の仕事をされていなかったそうで、その間、別の方が食虫植物の世話をされていたそうです(世話をする方も何人か交代していたみたいです)。その世話があまり良く無く、多くの貴重な食虫植物を失ってしまい大変残念がられていました。Dさんが栽培技師の仕事を再び引継いだ時、ネペンテスなど枯れかけの株が多くて、傷んだ株の仕立て直し、植え替えで大変忙しいとおっしゃっていました。今年の食虫植物展の開催も危ぶまれた程だともおっしゃっていました。そういえば、前回訪れたとき、ロリデュラの株が展示されていましたが、そのロリデュラも失ってしまったそうです。

 昼食も一通り食べ終え(初対面なのにご馳走になってしまいました)、いよいよ育成温室の見学です。育成温室は一般の方が入場する事は出来ませんので、今回私も初めての見学となります。育成温室は数棟並んでおり、温室と温室の間には大きなサラセニアプールが広がっていました。またその脇にはネ.ペルビレイ、マダガスカリエンシスがカンカン照りの直射日光を元気に浴びていました。Dさん曰く、ネ.ペルビレイなどはこれぐらいの日照が良いそうです。

 さて、育成温室の一つはほぼネペンテスオンリーとなっており、隣の別の育成温室ではドロセラ類などが他の草花と一緒に栽られていました。私はまず、ネペンテス育成温室を見学しました。Dさんは「散らかっていますけど。」とおっしゃいますが、温室内はまさに展示用ではない、ネペンテスを栽る為の環境という感じで、思わずニンヤリしてしまいそうでした。当日は真夏の晴天日和ということもあり、温室内に少しいるだけでも暑さで汗が流れてきます。温室の遮光は40〜50%、今年は暑いのでさらに薄い寒冷紗をかけているそうですが、温室内は非常に明るい印象です。天窓、側窓はすべてが開放されており、風通しも良いです。Dさんは「夜でも開けっ放しですよ。」とおっしゃり、温室内は湿気で葉が濡れているという事は無く、カラッとした日照多めの環境でネペンテスを栽られていました。

 ネペンテスの栽培極意はやはり「根を充実させる事」と伺いました。必要以上に遮光しない、水やりも鉢土の水ゴケが乾いてからにする、風通しを良くする、という点が重要なようです(ただし低地性の場合です)。用土を触りましたが、表面は濡れているものは無く、ほんのり湿り気があるという感じです。確かに、小さな葉でもでっかい捕虫袋をつけたネ.ラフレシアーナなどを観察してみると納得です。根が水を求めて鉢中を伸ばしていく事がポイントの様です。そういえば、展示品のネ.アンプラリアの用土が乾き気味だったのは驚きました。その他、育成温室内ではDさんからたくさんのネペンテス栽培アドバイスをいただく事が出来ました。私は栽培の参考資料として、100枚以上のネペンテス等の写真を撮影しました。温室内はもちろん、栽培のヒントになりそうなものはいろいろ撮影させていただきました。

 次にサラセニアの栽培プールを見学しました。広い水盤に交配種を中心とした数百株ほどのサラセニアが贅沢に鉢同士の間隔をあけて日光を十分浴びて育っています。実は私の家ではサラセニアプールの水中にボウフラがいて困っているのですが、ここでは見当たりません。Dさんに伺ってみると、「サラセニアプールの水は水盤の水が無くなってから潅水するので、ボウフラが大きくなれないのだと思う。」と教えてくださいました。なるほど、フラワーセンターは常時腰水ではない様です。私は水切れが怖くて常時腰水栽培していますが、ここでも我が家との栽培方法の違いを見つける事が出来ました。その他サラセニアの株の紹介、栽培アドバイスもいただき、あっと言う間に私の帰る時間となりました。育成温室、サラセニアプールの場所だけで1時間以上は居たと思います。帰り際、Dさんからお土産(?)に数鉢の貴重な株を分けていただいたりと、大変お世話になりました。

 後ろ髪を引かれる思いでしたが、Dさんに挨拶をして14時半ごろフラワーセンターを後にしました。家とフラワーセンターの移動時間の方が格段に長いですが、それでも非常に充実したフラワーセンター訪問となりました。

 当日は炎天下という過酷な日和でしたが、快く展示会場、育成温室等の案内をしていただいたDさんには感謝の気持ちで一杯です。ここに記して厚く御礼申し上げます。

 

 

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